色は人生を変えうる

カラーコーディネーターの秋元未奈子さんは、その並外れた色彩感覚を“強み”とし、多くの企業研修や学校教育の場で、色の魅力を伝えている。

「まずは“色とは何か?”という基本的な知識に始まり、色の組み合わせやイメージ、たとえば小売業に従事されているビジネスパーソンであれば、お客様の目を引き、購買に繋がるような商品陳列における色彩のセオリーなどをお伝えします」

また、企業だけではなく、個人を対象としたパーソナルカラーのアドバイスにも従事。洋服やメイク、ヘアカラーについて相談にのることも多いのだとか。

「似合う色がわかると、みなさん本当に嬉しそうな顔をなさります。まるで、長年の悩みが一気に晴れたような。一方で、ご本人が好きな色と似合う色が一致していないときもあります。しかし、似合う色がすべてではありません。オシャレに見せたければ流行の色を身につけて時代を楽しめばいいし、花の色に心を奪われたらその色を身にまとえばいい。色は自由です。私は、みなさんが色を活用して、豊かな生活を楽しんでほしいと思っているのです」

色を楽しむというのはどういうことなのか。それを理解するにはまず、色のない世界を想像してみてほしいと秋元さんはいう。

「明日から急に、世界から色が失われたとしたらどうでしょう。たとえば、白・黒・グレーだけの世界。おそらく、旅も食事もオシャレも色あせたものになるでしょう。人生の喜びがものすごく小さなものになってしまいます。それだけでなく、電車の路線図や案内看板が白黒になったりしたら世の中は間違いなく混乱してしまいます。色は生活の中に利便性や美しさ、心地よさ、楽しさ、そして幸福をもたらす大切な要素。私たちは必要な方に必要な色を、必要な方法で提案しているのです

思えば幼少の頃から、色に対する感覚は鋭く、特別なものだったと秋元さんは当時のことを振り返る。

「私の母は今で言う、ランドスケープデザイナーとして活躍。美しい庭造りを生業としていました。私が生まれたときには一時仕事を辞めて、子育てに専念。私の洋服を手作りしてくれていたのですが、今でもその色や柄を細部に至るまで鮮明に覚えているのです」

しかもデザイナーだったお母様が作るのは、当時としてはかなり前衛的ともいえるような色鮮やかな洋服ばかり。恐らく、秋元さんの色に対する感度の高さに気がついたお母様が、その感性を育もうとしてくれたのだろう。

「大学ではファッションを専攻し、デザインや染色について学びました。大学を卒業した後は、テーマパークを運営する会社に就職したものの、色に対する興味を失うことはありませんでした。やがて旅行先でみたセーシェルの美しい海の色を目にして感動を覚え、色の専門家として生きていくことを決意しました」

世界に存在するほとんどの物質にはすべて色が付いている。でも、それを見ているようで見ていないのだと秋元さんは指摘する。

「鮮やかな色には目を奪われますが、ささやかな色は無視されがちです。視覚のスイッチをオンにするだけで、世界はカラフルになる。季節もより敏感に感じとれるようになりますし、建物の色や洋服の色を通じて、時代も見えてくる。何よりも色を知って、自由に使いこなせるようになれば、自分自身を変えることができます

それは外見に限ったことではない。色は人間の内面にも影響を及ぼす。

「最近の研究では、色が人間の体と心に大きな影響を与えることがわかってきています。たとえば、電車のホームの端を青色の光で照らして自殺を防止したり、ピンクが女性ホルモンの分泌を促すことも明らかになっています。食欲を抑制する色もわかっています。このように色を使いこなせば、自分の心理状態をうまくコントロールすることもできるのです。そういった色の使い方を正しくアドバイスするのが、私たちプロの役割であると自覚しています」

インタビューアー:伊藤秋廣(エーアイプロダクション