常に“自己”を凌駕し続ける

ハンドメイドの腕時計ベルトを中心に、こだわりの革製品をフルオーダーにて提供する革職人の小島国隆氏。クロコダイルや希少価値の高いガルーシャなど、いわゆる“エキゾチックレザー”加工の技術力に定評ある稀有な存在だ。

「時計そのものは、どんなに高級品で、手作りの逸品といわれるものであっても、基本的には工業製品なので、誰かしら同じようなものを持っています。その一方、手作りのベルトは、原料のどの部分をカットしたかによって模様が微妙に違ってきますし、完全フルオーダーなので、愛好家のこだわりを形にすることが可能。ベルトにこだわることで、高級時計の繊細さがさらに際立ち、世界で二つとない時計となるのです」

 

デザインはもちろん、原料カットから縫製まで、すべての工程をひとりで行う。しかも、ひとつひとつの作業に対して一切妥協はない。

 

「例えば、ガルーシャであれば、原料を研磨して光らせてから、ダイヤモンド粒子が吹き付けられた糸ノコを使ってカット。革が固くてミシンでは縫えないため、ドリルで小さな穴をあけて、まっすぐ縫い上げていきます。ステッチが、真っすぐなラインを描いているかどうか、表面にバリはないかなど、細部にまで徹底的にこだわります」

 

特に高級時計のオーナーは細部にまでこだわる人が多いのだとか。その感性を満足させるために、小島氏は全身全霊を注ぎながらモノづくりに没頭する。オーダーをもらってから、最低でも3か月の期間を要するというのも納得だ。

 

絶対に工程を端折ったりはしません。昔ながらのやり方にはすべて意味がある。必要だからこそ、そのひとつひとつの工程が存在しているのですからね。昔ながらの製法を踏襲しつつ、そこに現代的な感性を注ぎ込む、それが私のスタイルです」

確かに“職人がこだわりを捨てたらおしまい”だと、一般的にも言われてはいる。ところが小島氏のこだわりは、“やるべきこと”のレベルを超越しているようにも見える。

 

「やるべきことをやるのは当たり前。イメージ通りのものが仕上がっても、お客様は喜びません。思っていた以上のものが提供されて、はじめて人は心動かされるのではないでしょうか。そこに感動が生まれる。“期待値イコール”のものを提供しているだけでは、リピーターになってはもらえないのですよ

 

小島氏のこうした真摯な職人気質と製品のクオリティが口コミで広がり、個人客を中心にオーダーが殺到しているという。

 

「これまで、様々な工房でガルーシャのストラップをオーダーしてはきたものの、“満足することがなかった”というお客様が、ここにたどり着く、というケースが増えています。そういった方が私の作ったサンプルを見て“これだ”と目を光らせてくださる。プレッシャーはありますが、そういうこだわりの強いお客様を相手にするほど燃えますね

 

毎回、妥協することなく、100%の製品を提供しているという小島氏。ところがリピートで依頼をもらった時点で、その100%と同じレベルのものを提供しても相手を満足させることはできないという。

 

「もしかしたら、お客様は気づかないかもしれませんが、自分自身が納得できないのです。だから常に成長し続けなくてはいけない。それこそが職人の矜持と言うものです」

※小島さんのインスタグラㇺで、素晴らしい作品を見ることができます。

https://www.instagram.com/kunitakakojimax/

インタビュー・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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