“ここに筒井の建築が欲しい”といわれる仕事

新進気鋭の建築家として注目を集める筒井紀博氏は、住宅や店舗のインテリアや内装といった小規模のものから、商業ビルをはじめとする大型物件まで、実に幅広く手掛けている。

「持ち味ですか?周囲からは“ガレージハウスと愛犬家住宅なら筒井だよね”というイメージを持たれていますが、決してそれだけではないんですよ(笑)。結果的には、こだわりのある施主さんからいただく住宅関係の仕事が全体の5割を占めていますね」

 

ところが、現実的には建築家に家づくりを依頼するユーザーは全体の5%に満たないのだとか。そこに“敷居の高さ”が存在していると指摘する。

 

「実は皆さんが思っている以上にコストパフォーマンスは高いし、僕たちは設計だけではく、工務店に対する見積もり依頼からチェック、金額の交渉、現場監理までを担当するので、一括でお任せいただけるというメリットもあります」

 

建築家と一緒に作る家には、コストや手間といった現実的な要素のみならず、建売やハウスメーカーが作るものでは享受できない魅力があるという。

 

「僕たちは単に物理的なものを提供するのではなく、生活スタイルそのものをご提案します。どういう風に生活していったらもっと楽しくなるのか、それを知るためにけっこう突っ込んだところまでヒアリングを行います」

例えば車が好きな人なら、自分の車のどのアングルから見るのが好きか?なぜその車に乗っているのか?までをヒアリングする。興味がある部分を掘り下げて、それを住空間に反映させるのだとか。

 

「似顔絵を描く作業に似ているのですよ。例えば、たれ目の人だったら、それを大げさに表現しますよね。それと同じで、そのご家庭のアイデンティティを空間の中に大げさに表現していくことで、より愛着がわくようになります」

 

ところが要望をしっかりヒアリングする一方で、それを必ずしもそのまま反映するわけではないともいう。

 

「具体的な要望だけをピックアップすると、どうしても“今、こうしたい”と目先のことだけに目が行ってしまいがち。僕らは確かに3次元を作っているように考えられますが、そうではなく、多次元領域でモノを作っている。時間軸という要素も考えていかなくてはなりません。だから、今が良くても10年、20年経過したときに生活がしづらかったら意味がないのです」

独立してから15年。誰でもいいのではなく、“ここに作るのなら筒井の建築が欲しい”と、そう思ってもらえるような仕事を積み重ねてきたという。

 

自分が持って生まれた職の才能を生かすのが使命。誰でもできる仕事は他がやればいい、そんな意識で仕事に向かっています」

 

今後は教会やギャラリー、セカンドハウスなど、人がより五感を使うような非日常空間を手掛けていきたいという筒井氏。サステナブルに愛される建物が、氏の感性によって次々と生み出されていくことを期待したい。

 

筒井紀博空間工房

http://ktts.jp/

 

インタビュー・文:伊藤秋廣(エーアイプロダクション

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